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建主は、街区の中心に位置する敷地の奥まった印象を好み、そこに外部から内部の様子が伺い知れない住宅を欲した。一方で屋外には開放感を求めていたため建築で外部空間を囲い取る形式が初手となった。 歳月と共に手狭になった現在の住まいからの増床を図るため、敷地の輪郭に沿って2階分の外壁を設定し、フットプリントを最大化した。方位と生活動線に応じて機能を配置し、必要な幅の分、内向きに空間を膨らまし、建蔽率を使い切った。中心に残された外部には地階を計画し、掘削量と山留を減らすため、建築面積に含まれない地盤面上1m以下の範囲で地階の屋根をもち上げた。さらに1階居間の床をGL-500mm、キッチンのある地階の床をGL-1,600mmとし、階で機能を分けつつ、関係性に応じてレベル差を小さくした。こうして、2階の円環状の空間と、地階床・1階床・地階屋根のスキップフロア状の空間という異なる質が生まれた。地階屋根の上は、テラスと名付けた。建主はここで、屋外映画鑑賞会や、バレーボールの練習をする想定である。機能面から床をゴムチップで仕上げたが、用途と無関係な鮮やかな青色を選択したことにより、空っぽの空間の特殊性が強まっている。そのテラスに向かう開口を介して、1・2階の空間が視線で結びつき感覚的距離は縮まる。一方、テラスを中心に周回する動線により、物理的距離は引き延ばされ、見ることと、行くことが別の距離感として同居している。高さ、長さ、幅が階や辺ごとに異なり、空間は室を跨ぐ度に伸縮する。幅750mm、長さ10m、天井高さ3.3mの極端に細く高いクロークと幅4mの寝室が連続する。材や幾何学の取り合うコーナーで濃密になり、直線部で引き延ばされ希薄になるというディティールの粗密の変化もこうした体感に貢献している。 地階と一階の関係において、距離感は床のレベル差の隙間の扁平な繋がりの中に現れる。引きのとれる地下のキッチンからは、1階居間の10mほどの長さの壁面の全長が見渡せる。居間に立てば目線がテラスの先まで抜け、2室分の90㎡の広がりが得られ、座れば9mほどのパノラマの先に地階が広がり、キッチンと居間は親密な距離となる。 大小、遠近、高低、粗密に加えて色の有彩・無彩、細部の洗練・粗野といった要素も含めた多様な階調の集合からなるこの建築は、それらの間を揺れ動く、どっちつかずの均衡を作っている。空間は主体の所在によって緊張し、弛緩し、繋がり、途切れる。狭小敷地やローコストといった制約の少ない計画において、贅沢さや建主の望む「自由な感じ」はこの階調の中に見出されている。
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| No. | 172 172 |
| Title | X X |
| Principal use | House House |
| Structural Design | Ohno JAPAN オーノJAPAN |
| Construction | AO 青 |
| Architectural Design | AOKI Jun, SASADA Yushi, YAMAMOTO Takashi 青木淳, 笹田侑志, 山元隆志 |
| Design | 2017.10 - 2018.06 2017.10 - 2018.06 |
| Construction | 2018.07 - 2019.10 2018.07 - 2019.10 |
| Location | Tokyo 東京都 |
| Site Area | 243m² 243m² |
| Floor Area | 294m² 294m² |
| Number of Stories | B1, 2F B1, 2F |
| Structure | RC RC |
| URL | https://data.shinkenchiku.online/projects/articles/JT_2020_01_064-0 https://data.shinkenchiku.online/projects/articles/JT_2020_01_064-0 |
建主は、街区の中心に位置する敷地の奥まった印象を好み、そこに外部から内部の様子が伺い知れない住宅を欲した。一方で屋外には開放感を求めていたため建築で外部空間を囲い取る形式が初手となった。 歳月と共に手狭になった現在の住まいからの増床を図るため、敷地の輪郭に沿って2階分の外壁を設定し、フットプリントを最大化した。方位と生活動線に応じて機能を配置し、必要な幅の分、内向きに空間を膨らまし、建蔽率を使い切った。中心に残された外部には地階を計画し、掘削量と山留を減らすため、建築面積に含まれない地盤面上1m以下の範囲で地階の屋根をもち上げた。さらに1階居間の床をGL-500mm、キッチンのある地階の床をGL-1,600mmとし、階で機能を分けつつ、関係性に応じてレベル差を小さくした。こうして、2階の円環状の空間と、地階床・1階床・地階屋根のスキップフロア状の空間という異なる質が生まれた。地階屋根の上は、テラスと名付けた。建主はここで、屋外映画鑑賞会や、バレーボールの練習をする想定である。機能面から床をゴムチップで仕上げたが、用途と無関係な鮮やかな青色を選択したことにより、空っぽの空間の特殊性が強まっている。そのテラスに向かう開口を介して、1・2階の空間が視線で結びつき感覚的距離は縮まる。一方、テラスを中心に周回する動線により、物理的距離は引き延ばされ、見ることと、行くことが別の距離感として同居している。高さ、長さ、幅が階や辺ごとに異なり、空間は室を跨ぐ度に伸縮する。幅750mm、長さ10m、天井高さ3.3mの極端に細く高いクロークと幅4mの寝室が連続する。材や幾何学の取り合うコーナーで濃密になり、直線部で引き延ばされ希薄になるというディティールの粗密の変化もこうした体感に貢献している。 地階と一階の関係において、距離感は床のレベル差の隙間の扁平な繋がりの中に現れる。引きのとれる地下のキッチンからは、1階居間の10mほどの長さの壁面の全長が見渡せる。居間に立てば目線がテラスの先まで抜け、2室分の90㎡の広がりが得られ、座れば9mほどのパノラマの先に地階が広がり、キッチンと居間は親密な距離となる。 大小、遠近、高低、粗密に加えて色の有彩・無彩、細部の洗練・粗野といった要素も含めた多様な階調の集合からなるこの建築は、それらの間を揺れ動く、どっちつかずの均衡を作っている。空間は主体の所在によって緊張し、弛緩し、繋がり、途切れる。狭小敷地やローコストといった制約の少ない計画において、贅沢さや建主の望む「自由な感じ」はこの階調の中に見出されている。
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